物で税金を納める!?(相続税の物納制度とは)
 

相続税納付方法の一つに「物納」という制度があります。物納制度を利用できるのは金銭納付困難であり、且つ延納によっても納付が困難な場合で一定の要件を満たすものです。
ここ数年、不動産価格の下落と二極化が進み、地価の下落スピードに相続税評価額が追いつかず、土地の相続税評価額(収納価格)と時価の乖離が大きい土地が多く見受けられ、相続税の物納制度があらためて注目を集めています。

物納とはどのような制度なのでしょうか?不動産の物納について解説いたします。


◆1.相続税の物納制度とは
相続税の納付は金銭一括納付が原則ですが、金銭納付困難であり、且つ延納(分割払い)によっても納付が困難な場合で一定の要件を充たすものは相続税の物納制度を活用することができます。

1)物納の要件

(1) 金銭一括納付はもちろん延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があること。
(2) 納期限までに物納に充てようとする財産の種類及び価格などを記載した物納申請書を税務署に提出すること。
(3) 物納財産は国が管理又は処分するのに適したものであること。

このように「お金ではとても支払えない、分割払いでも払えない」ことが物納制度を活用する上での大前提となります。これを証明するために物納制度を利用する場合は「金銭納付困難とする理由書」という書類に「何故お金で払えないのか」を記載します。この書類は近い将来の確実な収入や臨時的な支出、また相続人固有の資産の状況を把握し物納制度を利用できるか否かの判断材料となるものです。
 つまり、相続財産に現預金がない場合でも、相続人に多額の現預金がある場合や、多額の臨時収入が見込まれている場合などは物納制度の活用そのものが利用できません。

2)物納に充てることのできる財産

物納に充てることのできる財産は下記の要件をすべて充たしたものでなければなりません。

(1) 相続等により取得した財産であること
  相続財産、つまり被相続人が所有していた財産であること。
したがって相続人固有の財産を物納財産とすることは認められません。
(2) 日本国内にある財産であること
  相続財産であっても海外の不動産など、日本国外の財産は物納財産とすることは認められません。
(3) 国が管理または処分をするのに適した財産であること
  物納された財産は最終的に国が管理、または処分(売却)します。したがって、賃貸用不動産で個別の入居者管理が煩雑なものや賃料が滞納されているもの、または無道路地など売却(処分)が困難な不動産は物納が認められません。仮に物納申請した場合でも他の財産に変更を求められることになります。

3)物納に充てることのできる財産の種類と順位

物納に充てることのできる財産の種類は以下のように限定されており、充当順位も決められています。


第一順位・・・国債地方債、不動産、船舶
第二順位・・・社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益権
第三順位・・・動産

上記のように物納できる財産と優先順位が決められています。例えば不動産を相続取得した場合、株式を物納することなどは原則、認められません。

複数の不動産を所有し、そのうちのいずれかを物納しようとする場合、どの不動産を物納に充てるかという選択は納税者すなわち相続人が決定します。国が特定の不動産を物納財産として指定することはありません
 例えば、利便性の高い土地と、利便性の悪い土地を相続取得した場合、後者を物納申請しても差し支えありません。

4)物納不適格財産とは

前述のように不動産は第一順位として物納が認められていますが、以下の要件に該当するものは、国による管理、処分が困難であるという理由から物納(収納)されません。

■物納不適格財産(不動産を対象)
(1) 質権・抵当権その他の担保の目的となっている財産。
(2) 所有権の帰属等について係争中の財産。
(3) 共有財産。但し共有者全員が持ち分の全部を物納する場合を除く。
(4) 譲渡に関して法令に特別の定めがある財産。
(5) 買戻しの特約の登記、所有権移転の仮登記等のある不動産。
(6) 売却できる見込みのない不動産(借地人が不明・無道路地等)。
(7) 稼動工場の一部を構成する不動産等のように他の財産と一体して効用を有する不動産。
(8) 現状を維持するため、土留め、護岸の築造又はその修理を要する土地。
(9) 境界が明確でない土地で、隣接地主から境界に異議のない旨の了承が得られない土地。
(10) 現に公共の用に供されている又は供されることが見込まれる土地。
(11) 入会慣習のある土地。
(12) 今後数年以内の使用に耐えられないと認められる建物。
(13) 維持又は管理に特殊技能を有する劇場・工場・浴場その他の建物。
(14) 土地の所有権を伴わない立木。
(15) 借地・借家契約の円滑な継続が困難な不動産。

物納申請時に上記の該当項目がある場合でも、申請後、整備をすることにより要件をクリアすれば、物納が認められ国に収納されます。例えば物納申請時までに、土地の境界の確定が出来ていない場合でも、物納申請後に境界確定が出来れば問題ありません。