連載3 Vol.1
 住む権利とその値段

私たちは住宅を取得するか借りるか、どちらかを選択しなければならない場合、普通、まず購入が可能かどうかを検討します。そして可能であれば、購入について具体的に考えていきます。
しかし、住宅を購入できる資金が十分にあり、条件も整っているにもかかわらず賃貸を選ぶ人がいます。あえて賃貸を選ぶ理由は何でしょうか。
ケースによっては購入よりも賃貸のほうがメリットが多い場合があるのでしょうか。というわけで、今週からしばらくの間、「損をしない住宅取得」を考える前に、まず住宅の購入と賃貸についていろいろな角度から比較検討してみたいと思います。
第1回目は「そもそも住宅を購入すること」とはどういうことなのか、素朴な疑問をもつところから始めてみます。既成の価値観から離れ、ちょっと頭を柔らかくして考えてみてください。

◆1.所有権とはどんな権利なのでしょうか

ちょっと堅い話になりますが、住宅を購入するとは一般的にはお金を払って「所有権」を取得する、ことを意味します。

所有権とは簡単にいうと、使用(住む)、収益(貸す)、処分(売る)という3つの行為を自由に行うことができる権利です。
当たり前の話ですが、住宅を購入した人は自由にその家を使う(住む)ことができます。つまり多くの人は住宅という“物”を購入し、自分以外は自由にできない土地という空間を確保することによって、“住む(自由に使用する)権利”を手に入れているのです(但し、住宅を建てることに関しては100%自由ではありません)。

では、同じ住むという権利を手に入れる場合でも、お金を払って借りる場合、その住む権利はどう違うのでしょうか。
また、同じ住む権利でも家を借りることはどのような権利なのでしょうか。
家を借りるとは「賃借権」を取得するということです。


◆2.賃借権とはどんな権利なのでしょうか
賃借権とは、簡単にいうと住宅を借りる権利のことです。住宅を貸してもらう代わりに、住宅の所有者(家主)にお金(賃料)を支払います。
そうすることにより、賃借権を得ることになります。賃借権では所有権と違って、住宅を好き勝手に使用することはできません。物件に手を加えたり、借りる側の人数が増えるなど条件が変わる場合、所有者の許可が必要です。もちろん、他人に又貸し(転貸)もできません。
*契約内容による

以上のように、住宅を購入することと、借りることとは住む人の「制約」という点で大きな違いがあります。
しかし、共通していえることは「お金を払って居住する権利を買う」ということです。

◆3.居住する権利の値段は?
住宅を購入する場合は“半永久的に居住する権利”を買うことになります。しかし賃貸の場合は、住む分、住んだ分だけ“居住する権利”の代金を払うことになります。
したがって賃貸のほうが合理的なようにも感じますが、長い目で見ると、購入したほうが“半永久的に住める”ので割安とも考えられます。

<賃貸と購入の“居住する権利”の価格比較イメージ>

注)住宅は現金で一括購入、その他の維持コスト等は一切考慮しておりません。

上図のように、支払った総額はいつか必ず「購入した場合の価格」を越えてしまいます。
例えば、10万円の家賃で10年間住んだ場合は合計1,200万円、30年で3,600万円、50年で6,000万円となり、結果 、賃貸の場合の「50年間住む権利の価格は6,000万円」になってしまいます。
しかし、5,000万円の住宅を購入した場合は、その5,000万円で、50年どころか、子供も、孫も、そのまた子供も、ずっと先の子孫まで住むことが可能です。これを考えるとやはり、購入した方が得なんでしょうか。

申し上げるまでもありませんが、現実を考えると、住宅を購入するか借りるかは、こんな単純な発想では決められません。 また、購入の場合は資産形成という側面 もあります。 むしろ、こちらからの発想のほうが重要といえます。
いずれにしても支払い続ける50年間の人生をどう過ごすか、老後はどうなるのか、家族はどう考えるか、社会はどう変わるのかなどなど、多くの人がじっくり考えるテーマです。
そう簡単には決断できません。ということで今回は、あえて基本的な事実を確認しました。